弓道人の日常の心掛け(マナー)


                     (弓道誌2000年9・10月号抜粋)

1 道場外で
  ・混雑するところでの移動は、弓を立てて持ち、肩に担いでは歩かない。
  ・弓弦を持ち弓をブラ下げた格好で歩かない。
  ・弓具は直射日光に晒さない。
  ・暑いとき、ビニール製などの弓袋は使用しない。
  ・弓は、中袋を使用して保護し、大切に扱う。
  ・乗用車に弓を乗せる時は、本弭を運転席の方にいれる。 
  ・車の中に弓は放置しない。
  ・電車・車などには、弦を張ったまま持ち込まない。

2  道場の出入りで
  ・道場で履物を脱ぐときは、入船に脱ぎ、式台で出船にするか、下足棚がある場合は必ず棚に収納する。
  ・道場に入る時は、オーバー・コートなどを脱いでから入る。防寒具を身に着けたまま神拝などしない。

3 道場内で
  ・神棚に神拝を行い、また国旗があれば拝礼し、何もない場合でも床の間(上座)に向かい一礼した後に
   先生や先輩に挨拶をする。
  ・学校の体育系クラブのように人の名を呼び捨てにせず、同僚といえども道場内では人の名には敬称をつ 
   けて呼ぶ。
  ・一段高くなっている審判席(畳)に腰かけることは避ける。
  ・道場内で喫煙は絶対にしない。
  ・弓を引く時は、指輪・ピアスなどの装身具はつけない。
  ・道場内でみだりに声高に談笑せず、規律を守るように心掛ける。
  ・道場内で立て膝はしない。体操座りもしない方がよい。
  ・部屋の出入りの際、敷居には乗らない。また、畳の縁(へり)を歩いたり、縁に座ったりしない方がよい。
  ・的に載せた賞品を貰う時は、軽く的に触れ、感謝の意を表し、賞品をいただく。

4 弓具の取り扱い
 (1) 弓・弦
  ・挨拶が終わったら、先ず弓に弦を張り、弓の姿を整えた後、胴着を装着する。
  ・弓に弦を張る手助けをする場合は、足を踏ん張り、肩に両手で末弭を持ち、姫反りに手をかけて力で弓を
   押さえつけることがないようにする。
  ・弦かけ板などの無いところでは、弓袋などを重ねてその上に弭をあて、壁などに傷をつけないように注意
   する。
  ・弦の伸び・掛かり具合・入木弓・出木弓などに注意する。
  ・弓に弦を張って弦の掛かりを修正する時、足で下成りの辺りを押えて矯正することをよくするが、大切な
   弓なので、足をかけたところはすぐぬぐうように心掛けたい。
  ・弦が毛羽立っているのは、手入れが不十分の証拠である。マグスネをかける。
  ・弓は、矢摺り籐・握り皮・弦以外のところは握らない。
  ・弦巻は、弦を張った弓に差し込んではいけない。また、弓と弦の間に「弓弽(かけ)」を挟んだりしない。
  ・他人の弓にはみだりに触らず、弓の肩入れなど決してしない。
  ・審査・試合で弦切れなどにより進行係が替弦を張り替えた時、決して肩入れはしない。
  ・弓具店で弓の買入れをする場合は、店主の許しを得るのは勿論、自分の矢束までは引かず、右肩先(耳を越
   えるあたり)までとする。
  ・弓に弦を張ったまま長期間置く時は、張り弦を二本かける。
  ・弓を床に寝かせて置いたり、置いてある弓をまたいだりは、決してしない。

 (2)矢
  ・矢は、行射の時に使う順序を決めておくと、矢の癖がわかり、修理・手直しに便利である。
  ・矢をあげる時は、外れた矢から先に、中り矢も的心より遠い矢からあげる。
  ・的枠に矢が射立ち、または射抜き、あるいは的の合わせ目に入った時は、両膝で的枠を押え、両手で矢の
   根元の方を握り、手で引かず、腰を伸ばすようにして抜く。
  ・的から抜いた矢は、矢羽がわを上にして上座に向け、矢の根を下にして手のひらで受けて、道場に持ち帰る。
  ・矢取りはなるべく、師範の先生以外の下位の人が交替で行ったほうがよい。

 (3)弽
    ・他人の弽を差したり、弦受け(弦枕)などをみだりに触ったりしない。
  ・道場内での弽の着脱は(上座の方向を避け)下座に向かい、正座または跪坐して行う。

 (4)的
  ・的の懸かり具合を道場から指示する時は、跪坐して行った方がよい。

 (5)その他
  ・弽・襷・弦すべり(胸当て)をしたまま矢取りをしたり、その他いろいろなことをしない。

5 行射
  
  ・公設の道場で、催物前(ものまえ)などの四つ矢を持って、また団体で射込み練習をしている人達を
   見かけるが、稽古をする他の人達に失礼になるので遠慮すべきであろう。
  ・自分の所属する以外の道場に遠征した時は、決して四つ矢を引かず、一手(2本)とすること。
  ・射込みは、決してしない。特に、師と同じ的には立たない。
  ・「何本うった」などの表現は使わない。「何本引いた」「何射した」などと言う。

6 指導を受ける
  ・講習会などで指導を受ける時に、反論・言い訳は慎む。

7 指導する
  ・人に教えたがる者が多いが、みだりに人の教えたがらないこと。特に、上位者がおられるときは慎み
  、上位者の指示に従う。

8 見取り稽古
  ・上位者の矢乗りを見ることはしない。但し、依頼された場合は別である。
  ・師範(自分の師や範士クラス)の行射を拝見する時は、必ず坐して拝見する。この時、正面からは
   拝見しない。但し、特に許しがあれば、立ってでも正面からでもよい。

9 心掛けとして、特に・・・
  ・「稽古を晴れにするぞとたしなみて 晴れを常の心なるべし」
  ・弓は心で引くものである。会で心にゆとりがもてるようになりたいものである。
  ・稽古は基本を重視し、的中のみを考えた手技(てわざ)に偏らず、心技を一体として修練すること
   を忘却しないように心掛けたい。


 以上、先師からや先輩の方々から教わってきたことなど、後輩の皆さんにお伝えしたいと思って記録
しました。聞き捨てにしないで、こころに留め置いて下さい。また、次の世代へも伝えていって欲しいもの
と思います。

                全日本弓道連盟会長 範士十段 鴨川乃武幸